すぐ近くに98歳と92歳の高齢のご夫婦が二人で暮していた。
奥様は、踊り、短歌をはじめ、文化的教室には欠かさず参加する
活発な方だったが、最近は腰を痛め、歩くのが辛そうだった。
ご主人は、耳が遠かったが、「年寄り扱いされる」のが嫌で
気持ちはいつも青春だった。
ある日、「Y町に(娘の近くに)引越しました」とお電話をいただいて
びっくり。
長い冬の雪かきなど、二人で暮すには不安材料がないではなかったが
できれば、ここに暮し続けていてほしかった。
近隣の手助けと、見守りがあれば住み慣れた自宅で最期まで暮せる
ように・・・
仕事をしていたときの熱かった思いを思い出した。
しかし、それはなかなか叶わない。
窓という窓は板でふさがれ、草も茫々だったが、野菜を育てていた
ハウスのなかには、トマトやブロッコリーが実っていた。
新しい土地で、元気で暮してくださることを祈らずにはいられなかった。
家の周りに、誰にも見られることなく咲いていた花たち。